スピーカーの開発者さんへ聞きました

以前、国内外のメーカーからスピーカー制作を請け負っている、スピーカー制作会社の開発に立ち会う機会が有りました。

絶対音感を持っていて、耳に入った音を全て周波数で言える人達。
紹介してくれたオーディオメーカーの人は技術者たちを「スピーカー屋さん」と呼んでいました。

この時は、車種を特定した2wayスピーカーを開発しており、大詰めのネットワーク作りでした。
決定されている2種類のユニットを単体で鳴らし、あくまで聴感的に特性を調べていました。

開発者A:4000辺りかな?
開発者B:こっちも4000で鳴らせるね
A:じゃあ4000目指して鳴らしてみよう


その場でコンデンサーとコイルで4000をクロスポイントにしたネットワークを作り鳴らしてみました。

「やはり4000だね」と再確認し、13cm側のネットワークはいじらず、ゆっくりとツィーター側のコイルをほどいていきます。

「コンデンサーは4000にしているけど、コイルは解いているから4000では無くなってますよね?」と、質問。
「計算通りに行けば苦労しないよ。ましてや車なんて周波数特性をフラットにしちゃうとちゃんと鳴らないしね」との事。

その後再度鳴らし、フロントガラスの一点を指差し「この辺りの3000にピークが出てるね」と、ピーク補正を行っていました。

自分が今まで見てきた車載用のネットワークは計算通り、乗数表通りでしたし、ピーク補正まで行っているネットワークは見た事が有りませんでした。

ドア用になるであろうユニットは、有る程度ドアの容量も計算して作り、トランクに付けると予想されるスピーカーは大幅だけどトランクの容量を計算して作るとの事。

ここから幾つか質問をしました。

Q:やはり車用はそこまで計算して作っているんですか?
A:こんな依頼はほとんど無い。大半が既製ユニットにロゴを入れるくらい

Q:では、車もホームも同じユニットで良いという事ですか?
A:家だとスピーカーから2mくらいは離れて聞くけど、車は離れても数十cm。だから同じで良いという事はないんだけどね・・・ 
車内は空気も少ないからトータルのコーン面積が大きくなると鳴りにくい。

(ホームユニットでは6畳=17㎝推奨が一般的)

Q:窓を開けた時の方が良く聞こえてしまうケースですね
A:そう

Q:時々ドアでは13cmがベストという意見を聞きますが、室内の空気量との関係はありますか?
A:13が推奨される理由は、ドアの容量、奥行き、いわゆる取りつけ性だと思う。空気量で言えば、大きな車じゃないと17cmを4つとかはどうかな。音が飛ばなくなっちゃうよ

Q:以前、10cmのコアキシャル+20㎝のウーファー1本のシステムしか組まない職人さんがいました
A:意図が分かりやすい。凄く面白いね。

Q:車もエンクロージャー化して鳴らした方が良いですか?
A:フリーエアーのスピーカーならむしろ作る必要はない。3ウェイの真ん中は別室が必要だけど

Q:日本には世界に誇れるスピーカーが少ないですが、技術が無いんですか?
A:日本では優秀な技術者は入口(ヘッドユニット等)に回されてしまう事が多い

Q:日本の音は個性が少ない気がします
A:海外では開発責任者の一存で「この音」と、決めてしまう傾向が強くて、日本では携わっている人達みんなの意見を尊重しながら作ってしまう。だから反対意見の出にくい個性の無い音になってしまう。

Q:ここにある古いスピーカー等を見て、聴いてみると、新しい物に拘らなくても良い気がして来ます
A:聴感的な音の良さと解像度はイコールではないからね。テレビの画素数みたいに、解像度って良い音に直結しないから。
でも、ネットワーク等に使われているパーツ類は日進月歩だから、素子は新しくて良い物に変えていく方が絶対に良い。


Q:アルミダイキャストフレームの方が良いですか?
A:特殊樹脂、鉄、アルミの順で音が良い

Q:良い音を出すスピーカーを作る上で最も重要なものはなんですか?
A:ボンド技術

Q:ならば日本のスピーカー制作の技術は世界一なのでは?
A:技術はね。それに日本のスピーカーはパワーを掛けなくても鳴るものが多いね。そういう優秀さはある。
携帯電話のスピーカーは小さいのに良い音してるでしょ?

今、良い技術者は携帯電話等のスピーカーの開発に引っ張りだこで、オーディオからどんどん離れている。

Q:上手なスピーカーの選び方ってありますか?
A:迷ったら能率の高いものを。能率とレスポンスは比例するし、純正アンプでも鳴るし。
レスポンスを犠牲にしてまで重いコーンのユニットは選ばない事。レスポンスの悪いスピーカーは幾らパワー掛けたところでスピードは出ない。


Q:スピーカーを作る上で拘っている事は?
A:10万で売られるスピーカーは、5万の倍の音が出なくてはならないと思っている。



びっくりしたケースでは、 某国内メーカーのスピーカー開発っぽいものに立ち会った時です。
某国のスピーカー工場から送られて来た数種類のコーン、フレーム、マグネットを皆で回して
・こっちの色のコーンの方がウケる
・このフレームなら予算内でイケる
・ツイーターはロゴを入れると20円高くなる
等、非常にあっさりしていて驚きでした。音に関しては運任せなのかと。
定価設定も原価から割り出すのではなく、4~5万だとライバルが多いから10万にする等。

しかし、出来た製品のカタログを見ると、厳選したパーツで出来上がった2wayスピーカー、その他諸々が書かれてました。

アンプでも、海外の競技用アンプは表記の倍くらいパワーを入れてしまうケースが有りましたが、酷い例では、「300wと書いてあるけど、全然そんなパワーは無い。ケースが大きいからそれくらい書いても良いだろう」と、そんな製品もありました。